北海道、美瑛の大波農場 大波太郎と申します。
美瑛町で70年に渡りつづく畑作農家の3代目です。
美瑛町は大雪山連邦の麓に位置しなだらかな広陵地帯が続く、北海道らしい風景が見渡せる町です。
内陸性の気候により昼夜の寒暖差が大きい気象条件で育つ野菜や穀物は甘みがのり良質な栽培条件が揃っている場所です。
当農場で栽培し、販売する野菜は幻のグリーンアスパラ「ラスノーブル」と、オリジナルブランドとうもろこし「風が吹かさった」です。
【アスパラガス】
「ラスノーブル」は美瑛町でしか栽培されていないオリジナルブランドで特徴はその強い甘みです。しかし今現在は、苗の供給がなくなり新たに栽培することは不可能。苗の供給が止まって数年、現状作付けされている農家が収穫出来なくなれば絶滅してしまいます。
その希少価値の高さと美味しさはTV番組、【マツコの知らない世界】でも取り上げられたほどで、その効果で高まっている需要に対し限られた量しか出荷できない実情です。
【とうもろこし】
「風が吹かさった」は、白色のとうもろこしに黄色の花粉が受粉してしまい2色の色が混じり合ったとうもろこしです。その混じり具合は場所によって様々な出方をし、半分以上黄色が出ることもあれば殆んど出ないこともあります。
特徴はこちらも強い甘みで糖度18~20度ほどになりメロンに匹敵するほどの甘さになります。
しかし「風が吹かさった」が誕生した当初は、この2品種が混合した状態が市場では病気扱いされてしまい、出荷を拒否されてしまいました。味や品質には何も変わりがない、むしろ見た目が可愛くなると私は思っているのですが評価に値しないという辛い現実が突きつけられました。その時は、1週間ほど町の中心部に立ち場所をお借りして対面販売をし、最後の方はただ同然で渡したりとなんとか無くそうとして辛い想いもしました。
【バクタモン農法】
近年は、集中豪雨や長い期間の降雨、猛暑で思い描いた作物が栽培しずらい環境に変化してきました。今まで通りの方法では上手く作れない品質や収入に大きく影響するように感じた2013年にバクタモン農法に出会いました。
これは健全な作物を育成するための土壌作り手伝う微生物応用資材で、主に3つの効果が挙げられます。
■窒素をコントロールする
■根の量が増える
■土壌中の有機物や作物残渣などを分解
バクタモン農法を取り入れて最初に効果を感じたのは、栽培作物の収穫量が上がったことでした。収穫量が上がれば収入が増えます。農協や市場を相手にする穀物を作っていた当時はこれはいいなと思いました。
3〜4年経った頃「とうもろこしが甘くなったね」と言われる事が多くなり、自分でも味の変化をしっかりと認識できたのを覚えています。自然な甘さが際立った感じでした。具体的には化学調味料で足された甘みとは違い、エグ味や苦味がなく、何度も食べたくなる飽きのこない甘さが全面に表れていました。
この時に自分で作った作物達が「美味しい」と言ってもらえる事の喜びを知りました。また、バクタモンを原材料にした自家培養液を作り何度も散布していました。理由は咲いた花がいつまでも咲き続け、それが子実の充実に繋がるためでした。また、粒で畑に撒いて土と混和させて使うバクタモンと、液で発芽後に何度も散布することによる相乗効果で品質が上がっていきました。今までだと長い期間の降雨やかんばつの被害が続いた時、ただなすすべもなく見守ることしかできませんでしたが、培養液が回復剤のように効果を発揮し被害を最小限に食い止められ何度も救われてきました。
使い続けて7〜8年経ってきた頃、畑ごとに差があった作物の収穫量も安定してきました。ただその中で、農家の流通の現状にモヤモヤを感じていました。それは他者よりも時間をかけ手間をかけ経費をかけたとしても、そうでないものとがひとくくりで出荷されて消費者の皆様に届けられてしまい、どれだけ頑張っても個人が評価されないからです。
そんな2019年に生まれたオリジナルブランドとうもろこし「風が吹かさった」は、偶然の産物でありネット販売を始めるキッカケになりました。
「より多くの人に食べほしい。」想いはこの1つだけです。そして野菜を通じて知っていただいた美瑛町に、いつか訪れて他の魅力も感じて欲しいと思います。
【農業と観光】
長年、この町は観光と農業が対立してきました。コロナ前は人口1万人に満たない町に年間180万人以上の観光客が訪れ、オーバーツーリズム(観光地にキャパシティ以上の観光客が押し寄せる事)を引き起こしていました。無断で畑へ侵入する人が一気に増え牧草ロールや小麦、じゃがいもの花が咲く畑の中で写真を撮影するなどの事態が続きました。
畑は農家の財産であり、生産現場です。
そこへ土足で許可なく勝手に入り込むことは、どんな農家でも嫌います。また、よその地域からきた人が消毒のしない靴で畑に踏み入れると病原菌が持ち込まれる可能性があります。そうすると作物が病気に感染し、土も汚染され場合によって枯れるは恐れがあるため気が気ではありません。
こうして農家は観光客を嫌って憎み、町は食い止めながらも観光を基幹産業として無視できない現実がありました。
当農場では丘の町びえいDMO(観光地域作りを行う法人)と協力し、「畑DEフットパス」にという取り組みを行っています。英国発祥のイベントですが少し目的が違います。
これは、農場まで来た観光客が畑の脇を歩きながら農業の厳しさや大変さと成り立ち、美瑛の歴史などを伝えながらガイド付きで散歩する体験ツアーです。もちろん、歩く前にはしっかり靴を消毒します。
参加者は普段入ることができない場所に入り、絶景を見ながら好きなだけ写真が撮影でき最後は近場の牧場でソフトクリームが食べられる特典が付いています。
このツアーを始めた理由は、増え続けるマナーの悪い観光客をどうにか減らしたいという課題が大きくあり、DMOと共有していたからです。
それには農業者も観光客への歩み寄りが必要だと考え、あえて自分たちの『中』に入ってもらい来て見て感じて理解を深めて貰おうとしました。また、大事なことは拒絶を繰り返して立ち入り禁止を訴えるよりも、お互いを知ること、相互理解を生むことだと感じていました。
2019年から始まったこの取り組みは、DMOのご尽力により少しづつ認知され始め農業と観光の融和を推進しています。
この「畑DEフットパス」に参加されは方々の様子も入っている動画がサマーシーズンバージョンとして、DMO制作のYoutubeで公開されているのでぜひご覧下さい。
体験ツアーに参加したい、大波農場に行ってみたいという方はぜひこちらからご応募どうぞ!
https://mybiei.jp/event/p=2816/
美瑛でお待ちしています☆
そしてこちらはフットパス体験記
https://mybiei.jp/article/footpath/
2020年には、保育所からの同級生がプロデュースして作り上げたとうもろこしの粉末「SIROCCO」を販売開始しました。赤ちゃんでもペロッと食べられるスイーツをキャッチコピーに、大波農場のとうもろこし「風が吹かさった」を100%使用し無添加で作られています。
気になった方お求めはこちら!
http://hannoji.jp
大波農場紹介動画を美瑛町在住の写真家、菊地晴夫さんに約1年半に渡り撮影していただきました。主にドローンによる美しい映像です。
https://youtu.be/nYwJzhKDG88
所属する美瑛町若手農家集団「ブラウマン」
https://www.facebook.com/blawman.biei/